練習中にこのようなアドバイスを受けたことはありませんか?「もっと乗り込んで行こう」「もっと腰を乗せて腰から進んでいこう」「もっと地面を押せるといいね」陸上競技を続けられてきた方にはこのようなアドバイスを受けてきた方もいるのではないでしょうか。私もこのアドバイスをよく受けていました。私は脚が遅かったので特に言われることが多かったと思います。そしてそのアドバイスを受けるたびに思っていたことがあります。乗り込み?腰を乗せる?それって結局何をどうしろというアドバイスなの???というかアドバイスになってなくない??何もわからんのだけど???乗り込みとか色々アドバイスは受けるのだけれども、結局何をすれば乗り込めるのか?腰が乗るのか?押し込めるのか?何も理解できませんでした。「乗り込み」、「腰を乗せる」、の部分をノウハウとしてコーチングしてくれる人というのはほとんどいないように感じます(一般的な指導者のレベルです。日本代表チームの指導者などについては対象外とします)。多くの場合、伸張反射を利用する走りという根本の部分はブラックボックスになっており解明できていない方は多く、その他の細かい技術や体の作り方、ランメニューの組み付けだけを指導しているコーチがほとんどです。「乗り込み、腰を乗せる」がもともとできる選手というのが一定数おり、そのような選手が自然と記録を伸ばします。そして肉付けを行うトレーニングを教える指導者がつくことで一流選手に成長していくという構図があります。逆に、乗り込み等を利用した走りができない人を教えてくれる指導者はいないというのが日本の陸上指導方針の基本的な構造だと感じています。一方で、この「腰をのせる技術」の指導を徹底的に行っている人たちもいます。ジャマイカ/アメリカのチームは特に「腰をのせる技術」の指導を徹底して教えていると私たちは考えています。彼らは「黒人だから速い」のではなく、「腰をのせて走る技術があるから速い」のだと私たちは考えています。黒人が無条件に脚が速いのであれば、白人や黄色人種よりも脚の遅い黒人はほとんどいないということになりますが、現実はどうでしょう?白人や黄色人種よりも脚が遅い黒人黒人選手などなど山ほどいます。そして、皆さんが「黒人」と称している選手のほとんどが、ジャマイカやアメリカの選手ではないでしょうか?南アフリカやボツワナ、一部ヨーロッパなどアメリカ/ジャマイカではい国の選手でも世界トップレベルの選手がいますが、そのような選手たちもちゃんとした速くなるノウハウのアメリカやジャマイカのコーチがついていたり、それらから学んだコーチなどが指導をしています。つまり、アメリカやジャマイカの選手は技術が優っているから速いのです。それでは、今回は「腰をのせる」とは一体どういうことなのかについて皆様に解説していこと思います。ここからは、「乗り込み」「腰をのせる」とはどういうことなのか?という解説と、それらを習得するための技術についてお話ししていきます!目次「乗り込み」、「腰を乗せる」、の正体は【伸張反射を利用して走る】ということ。伸張反射とは?どこの筋肉を伸張反射させるの?乗り込みの仕組み伸張反射を走りにつなげるためのドリルまとめ①「乗り込み」、「腰を乗せる」、の正体は【伸張反射を利用して走る】ということ。早速結論から言います。よく言われる「乗り込み」、「腰を乗せる」の正体は【伸張反射】と呼ばれるものです(伸張反射だけではありませんが、大半を占めています)。要は、「もっと乗り込んで行こう」「もっと腰を乗せて腰から進んでいこう」というアドバイスは、全て「伸張反射をもっとうまく使って走っていこうね」というアドバイスに置き換えることができます。要は「伸張反射を起こすためのフォーム」ができていれば自然と腰が乗り込み、自然と地面を押し込むことができます。②伸張反射とは?まずは「伸張反射」についてより詳しく解説していきます。「伸張反射とは、脊髄反射の一つで、骨格筋が受動的に引き伸ばされると、その筋が収縮する現象。 この収縮は、筋肉の伸展によって生ずる張力を、その筋肉の中にある筋紡錘が感受しておこるものである。(日本ストレッチング協会HPより https://j-stretching.jp/what-is-stretch-reflex/)」。難しいこと書いてありますが、簡単に言えば、「筋肉が引き伸ばされることにより、硬いゴムチューブのように勢いよく縮む筋肉の反応」を言います。そして注目すべき点は、これが『脊髄反射』であるということです。「反射」とは神経伝達メカニズムのうちの一つで、神経が脳を経由しないことで最速で筋肉に動きを伝える働きのことを言います。つまり「考えて力を加える必要がない&最速で力を伝えることができる」ということです。要は、筋肉が伸ばされることにより、身体の仕組みが働き、意識せずとも「ものすごいパワーを最速で引き出せる」ということです。伸張反射の特徴は、意識的に行う収縮運動よりもスピードが早いということです。そして、意識して力を加えないので無駄な力がほとんど働かず、トップスピードの維持や後半の失速低下に繋げることができます。この伸張反射を利用した走りには大きく2つのメリットがあります。①意識せずとも力を発揮できるので、無駄な力の消費を抑えることができるトップスピードが維持できず後半失速してしまう選手はこの伸張反射をマスターすることでタイムが大きく改善します。②収縮スピードが速い伸張反射とは、その名の通り「反射」という筋発揮を行います。反射が働くことで意識しなくても最速で最大の瞬発力を引き出し、地面に力を伝えることができるようになります。伸張反射を利用した走り方を覚えてしまえば、地面に力を加える時間を短縮できるため、ピッチ×ストライドを最大限高めることができます。速く走れるようになるための「ピッチとストライドの関係性と考え方」についてより詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでみてください。ピッチ×ストライドはウソ!?疾走速度と設置時間との関係性についてこの身体の仕組みをうまく利用することで走りは格段に速くなります。そして伸張反射を利用できる走り(フォーム)=「乗り込み/腰を乗せる」のできている走りとなります。③どこの筋肉を伸張反射させるの?伸張反射させるのは、、、ハム裏~お尻の筋肉脚の引き戻し動作を行う筋肉はハムストリング(腿裏)と臀筋(お尻)です。つまり、脚の後ろ側についている筋肉になります。これらの後ろ側にある筋肉を設置の瞬間に引き延ばすことによって伸張反射が起き、まるでムチのように脚をしなやかに振り下ろすことができます。この時の筋肉の引き延ばしを行うために意識することは以下の3つです。STEP1:骨盤を少しだけ前傾させる(少しだけ腰を反る)骨盤が前傾しなければ脚の後ろの筋肉は引き伸ばされません。脚の裏を伸ばすストレッチを行うとよくわかると思いますが、骨盤を前傾させる(腰を反る)とハム、お尻の筋肉がじわーっと引き伸ばされるのが分かると思います。この筋肉が伸びる状態を作るというのが伸張反射を利用する第一歩です.STEP2: 腰の位置を持ち上げる次に行うのは、腰の位置を持ち上げることです。腰の位置を上げることで脚の後ろの筋肉、お尻の筋肉が引き伸ばされます。実践してみましょう。脚を肩幅くらいまで開いたまま直立してください。次にSTEP1の通り、軽く骨盤を前傾させ(腰を反り)ます。次に骨盤の前傾(腰の反り)を意識したまましゃがんでください。しゃがんだら、体が起き上がらないようスキージャンプの姿勢をキープするようにして、腰だけをだんだんと高い位置に上げてみましょう。するとどうでしょう。腰が持ち上がるに連れて筋肉がジワーッと引き伸ばされていくと思います。この時、背伸びになりそうな感じでかかとが少し浮くくらいの場所で一番筋肉が引き伸ばされます。このポジションが伸張反射のベストポジションです。この腰を持ち上げるどうさが、俗にいう「腰を高く保つ」というものです。接地した時もこの腰の位置を保つために持ち上げ続けます。これが腰を高くするという感覚の正体です。また、若干のつま先設置になっていると思いますが、このつま先設置が「フォアフット走法」です。STEP3: 膝が一番高く上がった時にSTEP1/STEP2を同時に行う。これが最後の局面です。STEP3では「骨盤を前傾させる」「腿裏、お尻の筋肉が張るまで腰を持ち上げる」の2つを走りの中で行うタイミングについて話します。この「骨盤を前傾させる」「腿裏、お尻の筋肉が張るまで腰を持ち上げる」という動作を行うタイミングは「振り上げ脚の膝」が一番高く上がった瞬間です。この瞬間に、これら2つの動作を同時に行います。脚が空中にいてるうちに、この伸張反射ポジションを作り、設置した瞬間に力が解放される仕組みです。こうすることで設置の瞬間に力を発揮することができ、自分で押し込むよりもワンテンポ早く地面を押し込むことができます。こうすることで設置の瞬間に体が潰れず腰が乗る&無駄な力を使わずに体が弾むようにして進むことができます。世界のトップランナーの中には、この伸張反射ポジションを作るという動きを意識して行っている選手が多数います。私はこのトップ選手たちを見ることで伸張反射ポジションを作るタイミングを学んでいきました。以下、私が伸張反射を用いた走りの参考にしていたトップ選手、Wayde Van Niekirk(9.97)、Usain Bolt(19.19)、Andre Degras &Justin Gatlin(Relay),山縣亮太(10.00),桐生祥秀(9.87)のレースの動きです。動画を見る空中で筋肉の張りを作り設置の準備をしている様子がわかると思います。このトップレベルの選手たちが意識してこの動作を作っている様子が、空中の局面で確認できるのが分かると思います。乗り込みの上手い選手や、世界のトップレベルの選手からはこの動きをたくさん見ることができます。④乗り込みの仕組みここまではアバウトに動きの感覚や方法をお伝えしてきたので、ここでは実際にこの伸張反射走りがどのような仕組みになっているのかを解説していきたいと思います。良い例:伸張反射を利用した走り走りの中で3つのポイントをうまく使えている例です。骨盤前傾と持ち上げによって空中でうまく脚の後ろ側の筋肉を伸ばしそのまま設置、腰の高さを維持すればしっかりと伸張反射によって腰が進んで押し込めます。タイミングなどすごく難しいと思うので、上の動画を繰り返し見て実践してみてください。悪い例:怪我のリスクのある走りこれが一番危険な例です。骨盤を前傾し、筋肉を伸ばすところまではうまくいっているが、腰の持ち上げが甘くなり腰が落ち、ブレーキがかかって怪我に繋がるケースです。腰を持ち上げるには適度なリラックス状態が必要になります。決勝レースなどで力んで腰が落ちてしまうとこのような怪我のケースになりやすいです。必ず腰のたかさは気を使っていくようにしましょう。悪い例:伸張反射を利用できてない走り⑤伸張反射を走りにつなげるためのドリル伸張反射を使った走りができるようになるドリルその1<基本編>こんなメリットばかりある「伸張反射」ですが、体得するのは非常に長い時間とコツが必要になります。自身の経験測ではありますが、走りが「ハマった」「ハマってない」のほとんどの要因がこの伸張反射の精度に左右されていると私は考えています(原因は様々あると思いますが、何らかの原因のせいで結果的にこの伸張反射が使えなくなっているのではと考えます)。どれだけ速いトップレベルの選手でもスランプにはまるように、この伸張反射の技術は非常に高度なものになります。そんな難しい伸張反射ですが、ピッチとストライドを伸ばしタイムを速くするためには必ず抑えておきたい技術になります。ここからは伸張反射ができるようになるためのドリルについて解説していこうと思います。今回は<基本編>ということで、特に基本的な練習を紹介したいと思います。まずはこの基本的なドリルをマスターできるように取り組んでいきましょう。1.伸張反射ポーズの作り方(腰の高さとパワポジ作り)伸張反射をうまく行うためにもっとも必要なこと、それは「伸張反射を最大限引き出すための姿勢」を覚えることです。まずはこの伸張反射をもっともうまく引き出すための「伸張反射ポーズ」をマスターするための練習を行います。この「伸張反射ポーズ」をマスターするだけで、ピッチ、ストライドを向上させることができます。まずは下記見本をご覧ください。動画を見るこれが、伸張反射ポーズを確認するためのドリルです、伸張反射ポーズで意識する点は2つです。<1>骨盤の前傾と高さ<2>足を前に置く<1>骨盤の前傾と高さ腰は、骨盤の前傾を維持しながらあげられる最大の高さを常に維持します。この腰の高さを意識することで反発を大きく受けられるようになり、接地時間が短くなります。設置時間が短くなるとストライド、ピッチが大きく向上します。この「腰の位置(重心)」と「骨盤姿勢」によって反発が生まれ、ピッチとストライドが向上するのですが、反発について詳しく知りたい方はこちらの記事を是非とも読んでみてください骨盤を前傾したまま、自然とほんの少し爪先立ちになるくらいまで腰を高くあげます(この時骨盤の前傾は維持します)。するとお尻から腿裏までの筋肉がじわーっとストレッチされると思います。その位置をキープします。この腰の高さをキープすることで、接地した瞬間の重力に耐えることができ、潰れなくなります。潰れないことで接地時間が短くなることでピッチを高めることができます。<2>足を前に置く足は肩幅くらいまで開きます。。そして、足は意識的に前に置くようにしましょう。腿裏の筋肉がストレッチされるように、くつ1足分前に足を進めてください。腿裏の筋肉がストレッチされることで、ゴムが引き伸ばされるのと同じように筋肉が勢いよく収縮するためのエネルギーがたまっていきます。勢いよく筋肉が発揮することで接地時間の短縮とストライドの向上に繋がります。上記2点ができれば準備完了です。あとは腰から真上に上がるようにジャンプしてみてください。そして体が空中に浮いている間もハムが伸びるように足のポジションと腰の高さを意識します。うまくいくと、力を入れずとも自然と反発が帰ってきて弾むことができるのが分かると思います。悪い例動画を見る上の例では、足が前に置けておらず、骨盤も前傾せず腰が落ちているので上記の状態だと腿裏の筋肉が全くストレッチしません。この状態で同じ様な動きをやろうとしても全く力が入りません。それどころか前ももに大きな負担がかかり、膝の故障や肉離れにつながってしまいます。タイムを磨く+怪我予防のために、この伸張反射ポーズを確認するという作業は非常に大事です。2.ランジ→伸張反射ポーズのドリル動画を見る次は先ほど作った伸張反射ポーズを走りに近い動きで作っていくドリルになります。まず自然にランジの姿勢を作ります。ランジから体を起こす時に、いつものランジのように戻るのではなく、「伸張反射ポーズ」を意識して起き上がってください。具体的には、骨盤の前傾を意識しながら、腿裏が軽く張るように腰から体を持ち上げていきます。このとき、骨盤を軽く前傾させながら腰を持ち上げることを中心に意識しましょう。腰が持ち上がった時にハムが伸びているのを感じましょう。同時に、走りの中のイメージをしながら行ってください。足を開いている時は空中にいる時で、伸張反射ポーズになっている時が接地した瞬間だとイメージしてください。自然とランジの動きをしながら、膝が重なるタイミングで瞬時に伸張反射ポーズになるよう、メリハリのイメージを持ちながら行いましょう。このメリハリのある動きは、ピッチとストライドを高めるために非常に重要なイメージになります。3.腿上げを使った伸張反射反発ドリル動画を見るどんどん設置時間を短くしていきます。今回の記事で最後に紹介するのは「腿上げ」です。普段の腿上げの場合だと、足をさばいたり体をまっすぐにすることを意識すると思います。ですが今回の腿上げは全く別です。今回の腿上げでは「伸張反射ポーズ」を意識して行います。動画ではわかりにくいかもしれませんが、この時「伸張反射ポーズ」を意識して腰を少し高くあげています。腿上げが自然に行えるくらいの前かがみを作るイメージです。この時もハムが軽く伸びるように(実際はこの姿勢では伸びませんが)イメージをします。また、弾む時も腰から上にあがるようなイメージで弾みます。足の高さや入れかえスピードなどは一切考えず、設置の時に「伸張反射ポーズ」ができるよう意識して行いましょう。いつもの腿上げよりも接地が短くなり、前に進んでいく感覚がわかると思います。4.足上げLV1動画を見る今回まず紹介するのは、こちらのドリルです。名前なんていうんですかね?笑 みなさん一度はやったことがあるであろうアレです。ここでは仮に「足上げ」と呼ばさせていただきます。今回紹介する「足上げ」は少しいつもと違います。今回は「伸張反射ポーズ」の意識を取り入れた「足上げ」を紹介させていただきます。「伸張反射」について前回詳しく説明をさせていただいた通り、伸張反射を使うためには「筋肉のストレッチ」が必要不可欠です。要は、筋肉を意図的に伸ばしてあげることで伸張反射を起こそうと言うのが狙いです。こちらの「足上げ」をすることによって、より動きの中でこの「伸張反射」を意識しやすくなります。この足上げは、「動的ストレッチ」を行うための練習で、脚裏、主に腿裏の筋肉を中心にストレッチする狙いのある練習です。この練習で腿裏の筋肉を引き伸ばした状態を作りながら伸張反射走りの感覚を体得していきます。以下、感覚や注意ポイントをまとめた図となります。↓↓↓今回紹介する足上げについて、注意すべきポイントが大きく分けて2点あります。伸張反射とは、簡単に言えば「筋肉がストレッチされることによって、ゴムのように筋肉が縮む現象」です(※かなりざっくり話しています。より詳しく知りたい方は前の記事をチェックっ!!)。乗り込み?腰を乗せる?それって結局何?つまり、この伸張反射を起こすためには「筋肉をストレッチさせる場面」と「収縮させる場面」の2ポイントがあります。今回の足上げの中でもこの2つのポイントについて意識的に取り組んでいきます。上図①は足を上げる場面、つまり「腿裏の筋肉がストレッチされる」場面です。そして②が脚を振り下ろす局面、つまり「腿裏の筋肉が収縮する」場面です。この2つの切り口で注意点と意識を説明していきます。①の場面では、脚を振り上げ腿裏の筋肉がストレッチされるのと同時に「伸張反射ポーズ」を意識しましょう。ここで注意すべきポイントは「骨盤の前傾」と「腰を地面と垂直の方向(真上)に持ち上げること」です。前回の記事で書かせていただいたポイントと全く同じですね。図の①のように、脚を振り上げたのと同時に骨盤前傾と腰を持ち上げるのを意識してください。この時、接地足のかかとが少し浮くくらい腰を真上に持ち上げます。こうすることで振り上げ足の腿裏がしっかりとストレッチされます。②の局面では図のように2つのポイントに注意します。1つ目は骨盤を前傾しながら腰を少し高く上げることで前傾を作ることです。これも伸張反射ポーズの基本姿勢の意識と同じです。骨盤を前傾させながら腰を地面から垂直方向に持ち上がっているのを意識すると、自然と前傾になる&腿裏がストレッチされます。この状態で接地すると力が入るので、この姿勢をしっかりとキープしましょう。2つ目は「脚を自分から振り落とさないこと」です。図にあるように、接地するまでは振り上げ脚の股関節を畳み続けるよう意識し、自分から落とさないようにします。伸張反射によって力が入っていほしいタイミングは、地面に足が接地した瞬間です。つまり、足が接地するまでは出来るだけ腿裏、大臀筋がストレッチされていなければいけません。脚を自分から振り下ろしてしまうと、腿裏、大臀筋の緊張がほぐれた状態で足が地面に接地してしまい、伸張反射が起こらなくなってしまいます。せっかく腿裏がストレッチされた状態を脚を振り上げ腿裏がストレッチされたら、図のように腰を高く持ち上げ、前傾を作ることで地面に脚がつくように意識して行います。5.足上げLV2動画を見る次に紹介するのは「足上げ」を発展させた「足上げLV2」です。LV1の時よりも、より走りに近い形になります。まず振り上げ脚は軽く膝をおった状態で振り上げます。これは走っている時に膝をまっすぐ伸ばしながら振り上げる局面がないからです。また、振り上げる高さもLV1の時よりも低くなるようリラックスして振り上げます。これも走りの局面で無理して脚を高く上げる局面がないため自然な振り上げを意識します。このドリルで気をつけることはLV1と同じです。①の場面では、脚を振り上げ腿裏の筋肉がストレッチされるのと同時に「伸張反射ポーズ」を意識しましょう。ここで注意すべきポイントは「骨盤の前傾」と「腰を地面と垂直の方向(真上)に持ち上げること」です。振り上げ脚のハムが引き伸ばされるように意識して行いましょう。LV1と違ってLV2でより意識しなければならないのは身体の前傾です。LV1では脚を高く振り上げるため腿裏のストレッチを感じやすいですが、LV2になると自然な高さまでしか脚をあげないため、腿裏のストレッチを感じづらくなります。脚が高く上がらなくても腿裏のストレッチを産むために「伸張反射ポーズ」を意識した前傾角度をより深くする必要があります。そのため、LV2の足上げはLV1の時よりも前傾した状態を意識しながら行ってください。前傾を作るために必要な意識は「骨盤を前傾させながら、腰を垂直方向に高く持ち上げる」ことです。②においても意識はLV1と同じ意識で行います。股関節を畳みながら、骨盤の前傾をキープしながら足が自然に接地するのを待ちます。腿裏が伸びるのをしっかりと感じながら接地を待ちます。6.足上げLV3動画を見るこのLV3から走りの動きにかなり近づいてきます。①の局面は、同じように脚を振り上げた後に骨盤の前傾と高さを保つことを意識します。LV2までと大きく違うのは、「前に体を進めながら行う」点です。前への推進力を生むために、脚を大きく前に振り出します。はじめのうちは、意識的に前に振り出せるよう動画のように手を使ってしっかりと前に振り出せるようにしてみてください。手を使う場合、動画のように手と手を組んで足のしたを通します。この時この手で作った輪っかを出来るだけ「前方向に」作ることで、膝が自然と前方向に出てきます。足が前に出てこないと、腿裏、お尻の筋肉がストレッチされないので、初め慣れないうちは手を使って丁寧に脚を前に出していきましょう。振り脚を前に出すのと同時に、逆の足でも地面を押し身体を前に押し出します。脚で地面を押す時のコツは、上図①にも書いてあるように、脚で地面を押そうとせず腰、腰を地面から垂直方向に持ち上げるイメージを持つことです。腰を持ち上げることで勝手に爪先立ちになり、結局押し込めている、という感覚を覚えられるように取り組んでみてください。に持ち上げる感覚で進むことです。腿裏の筋肉のストレッチをしっかり感じられるように行ないましょう。②の局面でも、基本的にはLV2と同じことを意識します。骨盤の前傾をキープし股関節をたたみ、自然と足が接地するまで腿裏がストレッチされた状態で接地の準備を行ないます。LV3で大きく違うのは、LV2の時とは違い、両足が空中に浮いている時に伸張反射ポーズを作らなければいけない点です。実際の走りと同じく空中での動作を意識しなければいけなくなります。体が空中に浮いても伸張反射ポーズが取れる&脚を自分から振り下ろさないようにコントロールしましょう。また、今回の動きは走りに近い動きになります。よって、身体の前傾具合もより深くなり本番の走りのような動きに近づきます。空中で不安定になったとしても、脚は自分から振り下ろさず、前傾によって腿裏を伸ばし、接地に備えてください。接地する瞬間まで腿裏が伸ばされる体勢をしっかりとることを意識しましょう。うまく腿裏が伸ばされなくなってきたと感じたら、伸張反射ポーズを作り直してください。骨盤の前傾、腰の高さ、脚を少し前に接地するイメージ、これらのいずれかが欠けるだけでこの伸張反射を利用することができなくなります。7.伸張反射を利用した高速クリーン動画を見る今回まず紹介するのは、シャフトを使った高速スクワットです。このスクワットをする時は、重さは15〜20kg程度のシャフトを用いて行います。このスクワットのポイントは、とにかく速く!です。上の動画の通り、ジャンプの練習?と思ってしまうほど反発と同時に重りをはね返します。見てると簡単そうですが、これが非常に難しいです。これだけ一瞬のあいだに、伸張反射と全身の力を使って重りを引き上げなければならないからです。この高速スクワットを上手く行うためのイメージは、「伸張反射ポーズ」と全く同じです。骨盤を少し前傾し、足を半歩前に出します。腰を高く上げて腿裏、おしりの筋肉がじわーっと伸ばされたら準備完了です。あとはこの基本ポジションをずらすこと無く、重りによって感じる重力を、腰を真上に引っ張りあげる感覚で跳ね返すイメージです!↑スクワットで、かがんでいる瞬間の図。接地の瞬間は必ず股関節を畳んで接地するようにしましょう。股関節に何かを挟むイメージです。股関節を畳みながら伸張反射ポーズ→腿裏、お尻が引き伸ばされるのを一瞬感じた瞬間に、腰から上に上がる→体が浮き、シャフトが上がってくる、というようなイメージです。コツは2点です。1点目は腿裏とお尻の筋肉がストレッチされるのをしっかりと感じ取る点です。シャフトのような重りを一瞬で持ち上げるには、少ない時間の中で高い出力を出す必要があります。短時間で最大の出力を可能にするのが「伸張反射」です。伸張反射によりストレッチされた筋肉が、引き伸ばされたゴムのように収縮することで高い瞬発力が得られます。この力を使わなければ、だんだんとシャフトが上がらなくなってくるためタイミングが合わなかったり、腕でシャフトを無理やり上げたり、などというような状況になってしまいます。腿裏、お尻の筋肉のストレッチを感じることで、一瞬で力が跳ね返ってくる感覚に繋がるでしょう。2点目は「腰から身体が持ち上がることを意識する」点です。このようなシャフトを用いたクリーンを行うと、シャフトに力を伝えることができずに腕を使ってシャフトを上げてしまう悪いパターンに陥ってしまう方がいます。このような悪いパターンの共通点は「シャフトを直接あげようとしている」という点にあります。改善するためには、「伸張反射ポーズ」や上図で紹介しているように「腰から上に上がる感覚で体を持ち上げる」ことを意識してみましょう。まず腰が上に持ち上がり、その上方向の力が全身に伝わり身体が浮き、そして最後にシャフトに力が伝わり持ち上がってくるというようなイメージです。この跳ね返す感覚をマスターすることができれば、走りの中でもより伸張反射を意識できるようになります。※注意点連続ジャンプでの高速クリーン(動画で後半に行なっているもの)をする場合、図のような低い姿勢をすると腰を痛めたりする可能性があります。連続ジャンプでのクリーンの場合は「腰から上がる」を最優先に意識し、姿勢の深さは自然にできる程度のイメージで行なってください!この練習を筋力トレーニングとして用いる場合、20回×3 レスト2分 などで行っていました。重さを25kgなどにすることでより伸張反射のトレーニングになります。8.階段を使った伸張反射トレーニング動画を見る次に紹介するのは階段を使った伸張反射トレーニングです。1.まずは自然と足を段差にかけます。この時の段差は少し高いくらいがちょうど良いです。低い階段の場合、一段飛ばしで行っても構いません。足をかける時点で骨盤が正しいポジションにあるか確認をしてください。2.次に階段を登ります。この練習では登り方に工夫があります。普段私たちが階段をのぼる場合、膝の屈伸を使って階段を登っています。しかしこのドリルでは膝の屈伸は使わずに腰を垂直方向に持ち上げ前傾を作りながら「腿裏をストレッチする姿勢、つまり伸張反射ポーズ」を作ります。階段に足を乗せ、腰を真上に上げながら腿裏のストレッチをする、ただそれだけです。ただそれだけなのに、すっと体が乗り込む感覚を得られると思います。それと同時に、腿裏、お尻の筋肉がものすごく刺激されるのを感じることもできます。この伸張反射ポーズを作るだけで、前ももやふくらはぎの筋肉を使わずに、かつ体が乗り込み階段をのぼることが出来ます。段差によって程よい負荷がかかるため、臀筋や腿裏の筋肉のトレーニングになり、伸張反射の強化に繋がります。余談にはなりますが、「階段を使った、より効果的な練習」についてまとめている記事があるので、是非是非読んでいってください!【お尻を鍛える】 階段を使ったお尻トレーニング7選9.伸張反射を利用した片足ジャンプトレーニング最後に紹介するのは伸張反射を使った片足ジャンプトレーニングです。この練習は、上記の高速クリーンと階段トレーニングを合算したような練習になります。この練習では単純に伸張反射の瞬発力を鍛えるトレーニングになるだけでなく、試合前など動きの修正にも使える非常に便利な練習です。うまく走れている時の「感覚」について考えていきましょう。短距離長距離に関係なく、うまく走れる時は「弾んでいる感覚、ジャンプしている感覚、バウンディングのような感覚、脚が跳ねかえる感覚」、このような意見が多いのかなぁと思います(あくまで個人の実感値ですが・・・)。私自身もうまく走れている時はこのような感覚でした。つまり、うまく走れている時は、短時間に大きな力を生み出せるフォーム/神経系の連動状態などの条件が満たされているという風に考えることもできます。このようなジャンプトレーニングを行う事で、その状態ができているのかどうかというのを簡易的に測ることができます。ですので、動きがずれてきたり、よりスピードを高めたい、伸張反射の瞬発力をあげたいなどの時にはこの練習を行っていただければと思います。それでは解説に入っていきます。動画を見るこのドリルでもっとも大事なポイントは2点です。1つ目は、接地の瞬間に腰が潰れないよう意識することです。腰が潰れないようにするには、接地時に衝撃で沈みそうになる腰を真上に持ち上げるイメージでが必要です。これは伸張反射ポーズで毎度確認している点ですね。この記事の最初に紹介した高速クリーンを行ってみるとわかるのですが、脚の屈伸でジャンプするのではなく、腰を中心に身体が上がる感覚を持つだけで軽く弾むことができます。高速クリーンで掴んだ感覚を活かせるとより良いです。2つ目は力を入れるタイミングです。地面がつく本当に一瞬前に力を入れて弾みます。接地した瞬間に力を入れる感覚だと、一瞬力が入るのが遅くなります(個人差もあるので、瞬間のタイミングで合う方は変える必要はありません)。この動きが噛み合わない時は絶対に速く走る事はできません。断言します。今日の試合の動き、結果が悪かったけど、次の日も試合がある、、、なんてシチュエーションよくありますよね?そういった時、少しでも現状をよくする必要がある時に私がやっていたのがこの練習です。ひたすらこの動きで力が入るまで身体の動きの調整をします。これを行う事でマイルラップが1秒以上改善したこともあります。ですので、トレーニングとしてだけではなく、調整の一環としても行ってみてくださいね!⑥まとめ今回は「乗り込み/腰を乗せる」について詳しく解説しました。この伸張反射を使った走りというのを感覚、技術に落とし込むのは簡単なことではありません。今日お話ししたことを完成させるためにはさらに細かい技術の習得が必要不可欠です。コツ「乗り込み」の正体は「伸張反射」お尻と腿裏の筋肉を伸張反射させるコツ1:骨盤を軽く前傾コツ2:腰を高く上げるコツ3:空中で腿裏、お尻を伸ばす伸張反射を行う際もっとも注意したいのは、腰の高さが低くなり負荷なく乗り込めず肉離れをすることです。なので、「腰の高さだけは絶対に落としてはいけません」。伸張反射はうまく利用できればタイムを大きく縮めることができ流一方で、筋肉を大きく伸縮させることで筋肉には大きな負荷がかかります。一歩間違えれば大きな怪我に繋がってしまうので、「筋力強化」と「正しいフォーム」をしっかりとみにつけましょう。それでは!他の記事も是非是非ご購読ください!