速く走りたい。陸上選手ならだれもがそれを夢見て日々練習に励んでいると思います。そんな陸上選手の皆さんはこんな悩みを経験したことはありませんか?人と比べて脚が遅く、才能がないと感じている根性がないので、ハードなトレーニングが苦手だたくさん走り込んでいるにも関わらず、タイムが伸びないスランプにハマってしまい、なかなか抜け出せない全シーズンまで調子がよかったのに、今シーズンは調子が悪いこれらの悩みは陸上に本気で取り組んだことがある人なら誰しも抱えたことがある悩みだと思います。これらの問題を解決するために、先ずは指導者に話が聞きたいところです。しかしながら、指導者がうまく教えてくれなかったり、指導者と距離が遠いなどの影響で、指導者から指導を仰げない、などの経験をしてきたのではないでしょうか?指導者がいない環境での練習を強いられている選手の方たちはなおさらでしょう。このような状況に陥ってしまうと、解決の糸口が見出せず、モチベーションが落ち、結果的にタイムが伸びないという悪循環に陥ってしまいます。そのような悪循環に一度ハマってしまったら最後、そこからの脱却は非常に難しくなっているだろうとお察しします、、、かくいう筆者も大学生時代、全く同じ悩みを抱えていました。しかし、当時指導者がいなかった私の部活では、どう解決したらいいのかわからず、苦しい毎日を送っていました。しかし、そんな毎日の悩みは「走りの仕組みの要素」を理解し、「練習に活かしていく」ことですぐに解決できるものなんです!筆者もこの「走りの仕組みの要素」を理解し、「練習に活かしていく」ことを継続した結果、スランプから脱却するだけでなく、全国規模の大会への出場や、学校記録の樹立などを達成できました。もちろん、筆者はもともと早い選手などではなく、チームでも中盤程度の実力です。そこで今回は、そんな平凡な私を変えてくれた特別な練習方法を皆さんにお伝えできればと思います。初めは、先述した特別な練習方法への理解を深めていただくために、ピッチとストライドの研究から分かった驚くべき発見について説明していきます。ピッチとストライドという概念を正しく理解することで、自分の練習方針を考えたり、調子の良し悪しを判断して解決策を練ることが可能になります。是非ご覧ください!目次ストライドとピッチとは?ピッチとストライドの研究から分かった、驚きの事実研究で分かった、疾走速度に関係する真の要因とは上記の結果を練習に活かすためには?才能にとらわれずタイムを伸ばす練習方法自分の滞空時間/接地時間の適正値を把握する短距離選手のストライド限界値とは。指標を練習に活かす方法1指標を練習に活かす方法2練習指標を練習に活かす方法31.ストライドとピッチとは?早速ですがみなさんはストライドとピッチという概念についてご存じでしょうか?ん?ピッチ?なにそれ?という方もいらっしゃると思うので、ここではストライド×ピッチの概念についておさらいしていきたいと思います。ストライドとは、一歩の歩幅の広さのことを指します。ピッチとは、ある一定の期間でどれだけ足が回転したかという回転数を指します。ここでは単純化するために、1秒あたりの歩数(ピッチ/秒)をピッチとしましょう。ストライドとピッチという概念は、「疾走速度を算出するための計算指標」として用いられることが多いです。実際に、ストライドとピッチ2つの計算指標を用いれば、一秒間の疾走速度(秒速)を計算することが可能です。例えば、1秒間に5回のピッチで、ストライドが一歩2mだとしましょう。この人は1秒間に、2(ストライド)×5(ピッチ/秒)=10m。つまり秒速10mで走る選手だということができます。すなわち、ピッチの回数ができるだけ大きく、一歩の歩幅ができるだけ大きければ、それだけ脚が速くなるということです。2.ピッチとストライドの研究から分かった、驚きの事実ここまで、ストライドとピッチの概念についておさらいしてきました。「ストライド×ピッチ」は疾走速度の計算によく用いられる客観的な事実に基づいた計算指標であることをお伝えしてきました。ここで、一つの疑問点が出てきたのではないでしょうか。ストライド大きくするのと、ピッチを速くするの、どっちが重要なんや??タイムを伸ばすにはどちらを中心に高めるべきか?ストライドとピッチは、タイムを伸ばすにはどちらのほうがより重要な要素となるのでしょうか。速い選手の共通点として、何か相関関係があるのではないか。と疑問に思った人たちもいるのではないでしょうか。実は、これらの疑問に答えるような実験を行っていた人がいたんです。2013年に筑波大学の内藤景さんたちは、2011年に開催された公認競技会における男子100 m レースに出場した59名の男性学生競技者を対象にカメラで走りを撮影し、撮影された映像から区間毎のデータとして、0―30 m、30―60 m、60―100 m 区間のタイム、歩数、平均ピッチ、平均ストライド、平均疾走スピードを算出し、全力走スピードが高い競技者の加速局面の疾走動態の特徴を明らかにするための実験を行いました。結果はなんと、100mのパフォーマンスを左右する要因として、ストライドとピッチとの間には強い相関関係が見られなかったというものです。(とはいえ、多少はありますが、わずかなものです。)出典:内藤 景 苅山 靖 宮代 賢治 山元 康平 尾縣 貢 谷川 聡 『短距離走競技者のステップタイプに応じた100 m レース中の加速局面の疾走動態』よりhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/58/2/5813012/pdf/-char/en上記は左からそれぞれ、疾走タイムとストライド、ピッチ、ピッチ/ストライドを比較したものです。ここでは統計上で分析を行っており、R二乗の値がタイムとそれぞれの値の相関関係の強さを表しています。R二乗値は最大値が1であり、一般的には0.4を超えると強い相関関係が見られるとしています。しかし、ストライドと疾走速度の相関係数は0.062、ピッチと疾走速度の相関係数は0.083となっており、強い相関関係が見られないことが判明しました。要するに、R二乗値が1に近ければ近いほど関係性が深い。ということです。下記、引用です。."Fig. 1 に、100 m レース中の30―60 m 区間の平均疾走スピードと、30―60 m 区間の平均ピッチ、平均ストライド、そしてピッチ・ストライド比との関係性を示した。図中には示していないが、100 m レースタイムと30―60 m 区間の平均疾走スピードの相関係数は、他の区間より高い値であ平均疾走スピードと、30―60 m 区間の平均ピッった(30―60 m: r=-0.974、 p<0.01; 0―30 m: r=-0.911、 p<0.01; 60―100 m: r=-0.957、 p<0.01)。平均疾走スピードと平均ストライド(r=0.249、 p<0.1)、平均ピッチ(r=0.289、 p<0.05)比との関係性を示した。図中には示していないが、100 m レースタイムと30―60 m 区間の平均疾走スピードの相関係数は、他の区間より高い値であった(30―60 m: r=-0.974、 p<0.01; 0―30 m: r=-0.911、 p<0.01; 60―100 m: r=-0.957、 p<0.01)。平均疾走スピードと平均ストライド(r=0.249、 p<0.1)、平均ピッチ(r=0.289、 p<0.05の間には相関関係が認められたが(Fig. 1-a、-b)、その決定係数は、0.062と0.083で極めて低かった。また平均疾走スピードとピッチ・ストライド比の間に、相関関係は認められなかった(r=-0.024、 Fig. 1-c)"実はストライドとピッチは強い相関関係がなく、ピッチとストライドをどの程度で走れば一番速く走れるのかという基準は存在しないことがわかりました。意外ですよね。なぜこのようになるかというと、ストライドやピッチというのは、タイムよりも走者の身長や、疾走フォームの特徴(ストライド型/ピッチ型)が大きく関係していると考えられているためです。同研究チームではピッチ・ストライド比の指標から被験者の走りを、ストライドの優位性が高いストライド型の競技者群(SL-type)、ピッチの優位性が高いピッチ型の競技者群(SFtype)、どちらにも優位性を示さない中間型の競技者群 (Mid-type)の3つのタイプに分割しました。出典:内藤 景 苅山 靖 宮代 賢治 山元 康平 尾縣 貢 谷川 聡 『短距離走競技者のステップタイプに応じた100 m レース中の加速局面の疾走動態』よりhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/58/2/5813012/pdf/-char/enこの中で、身長、ストライド指数はSL/SF/Midで相関関係を示したことがわかりました。逆に、それぞれのタイプと疾走速度に対しては、強い相関関係が見られないことがわかりました。要するに、どのタイプの走りをしていても遅い人は遅いし、速い人は速いということです。また、ストライド型の選手は身長が高い選手が多く、ピッチの速い選手は身長が低い選手が多いということがわかりました。(MidとSFタイプの間には、SLタイプほど身長に強い相関が見られなかったことは留意しておく必要がありそうです。)3.研究で分かった、疾走速度に関係する真の要因とはここまで記事を読んでいただいた方は、「いやいや待ってくれ。それじゃあ私たちはどうやって足を早くすればいいの?」と思った方も多いと思います笑せっかく今までストライドやピッチという非常に便利な概念を用いて練習に活かしてみよう!と考えていたのに、練習の指標として意味が無いなんて、そんなの味気なさすぎますね。安心してください。ピッチとストライドの関係性とタイムには相関関係がみられませんでしたが、しっかりと内藤さんの実験にはヒントが隠されていました。実は、内藤景さんら研究チームは、上記の研究で速い選手の共通点を明らかにしていました。この実験では、先ほどのSL/SFデータの中からさらにタイム別にSLtype-Good 群(10.67±0.16秒)、SL-type-Poor 群(11.16 ± 0.12 秒)、SFtype-Good 群(10.69 ±0.10秒)とSF-type-Poor 群(11.02±0.10秒)の4つのタイプに分け、それぞれの疾走速度(Sprint Speed)、ストライド(Step Length)、ピッチ(Step Frequency)、接地時間(Contact time)、滞空時間(Flight time)を比較しました。(下図)上記の結果から下記のそれぞれGood群とPoor群の間には下記のような相関が見られることがわかりました。 SL-Type: 疾走速度、ストライド、ピッチ、接地時間、滞空時間 SF-Type:疾走速度、ピッチ、接地時間すなわち、SL-TypeはGood群のほうがPoor群と比べて疾走速度が速く、ストライドが長く、ピッチが早く、滞空時間が長く、接地時間が短い。SF-Typeの方はGood群の方がPoor郡と比べて疾走速度が速く、ピッチが早く、接地時間が短いということです。ストライドは長くピッチが早い方が疾走速度が高いのは当たり前なのですが、両者とも接地時間が短いというのは非常に興味深いですね。このことから、ストライドを伸ばすためには滞空時間を伸ばすことが重要で、ピッチを高めるためには接地時間を短くすることが重要であるということがわかります。すなわち、ピッチやストライドではなく、滞空時間や接地時間といったものを指標とすることが重要であるということが示唆されたわけです!これはとても興味深いですよね。確かに、ストライドやピッチというのは自分に適した値を見つけるのは非常に大変なのですが、今よりも接地時間をより短く、滞空時間をより長く、であれば練習の際にも意識してトレーニングに取り組みやすいかと思います。4.上記の結果を練習に活かすためには?ここまで、ストライドやピッチだけでなく、接地時間や滞空時間をより優先的な指標にして練習に取り組んだ方が良いという話をしてきました。しかし、このままでは練習に活かす際に1つ疑問が残ると思います。その事実は面白いが、結局これをどうやって練習に活かすの?ということです。そこで、これらの指標を応用する形で練習に活かす実際の練習方法を解説していきます。この練習方法は、SmartDash担当者で他の論文をリサーチしたり、有名な走者の走りを独自に研究した結果得られた知見を元に解説します。5.才能にとらわれずタイムを伸ばす練習方法先ほどの実験の結果から、滞空時間はストライドに、滞空時間接地時間はピッチに関係があるということはわかりましたね。すなわち、ピッチやストライドの値に関係なく、滞空時間をできるだけ長く、接地時間をできるだけ短くすることが速く走る上で重要であるということです。すなわち、滞空時間/接地時間を練習の目標指標として練習に取り組むことで、走りのどこを改善すれば良いのかがわかるようになるのです。これがまさに、先ほどの実験の結果を練習に活かす方法です。しかし、これらの指標を練習で活かそうとした時、大きな問題にぶち当たります。それは、通常の練習では滞空時間や接地時間を図る術がないということです。それらを図るための施設で練習できる人はごく稀だと思います。それでは、どのようにして滞空時間や接地時間を考えるための指標を用意すればいいのでしょうか?それは、下記の二つを行うことで滞空時間と接地時間を間接的に測定することができます。自分のストライドの限界値を予測することで滞空時間の指標とするピッチを計測することで接地時間指標とする「自分のストライドの限界値を予測することで滞空時間の指標とする」とは、自分のストライドと身長の比率を計算し、「自分が出せる最大のストライドの値」を予測し、そのストライドにどれだけ近いかで、「滞空時間が長いのか短いのか」を判断する方法です。「ピッチを計測することで接地時間指標とする」とは、自分の1秒あたりのピッチを計算することで、「接地時間が短いのかどうか」を判断する方法です。6.自分の滞空時間/接地時間の適正値を把握する今までの話から、ストライドとピッチは疾走速度と関係ないんじゃないの?と思われる方も少なく無いかもしれません。しかしそれはあくまで、「万人共通でこのストライドとピッチで走れば速くなれる」というようなストライド、ピッチは存在しないということです。それは何故でしょうか。前半の復習ですが、ストライドは何によって変動するか覚えているでしょうか?正解は下記2点です。走者の身長滞空時間つまり、研究の際に被験者の走者の身長がバラバラだったため、このストライドで走れば速くなる!という決定的な物はなかったわけです。(身長がバラバラなため、ストライドもバラバラになってしまった。)逆に言えば、「身長がストライドに及ぼす影響」が分かれば、あとは「滞空時間」が長いのか、短いのかを間接的に予測できるというわけです。これを予測するために重要になってくる概念が、「ストライド身長比」という考え方です。ストライド身長比とは、「自分の身長に対してストライドがどの程度広いのか」を身長比(自分の身長を1とした時に何倍か)で表したものになります。つまり、身長が170cmで平均ストライドが204cmの選手の平均ストライド身長比は1.2倍ということです。7.短距離選手のストライド限界値とは。上記の観点で我々SmartDashはトップアスリートの走りを分析しました。すると、興味深い結果が出ました。何と、ある一定のストライド身長比を超えると、人間のストライドはそれ以上伸びずらくなることが分かったんです。順を追って説明します。下図に注目してください。これは、1人の選手のタイムとストライド/ピッチの経過を観察するために、桐生選手の走りを10.8~9.98までの79本のレースのデータを統計したデータになります。この調査はSmartDashが独自に研究したものです。(出典:【表2/桐⽣祥秀選⼿の平均ピッチ、平均ストライド、ストライドの⾝⻑⽐】https://www.jaaf.or.jp/files/article/document/11337-1.pdf)「身長比」と書かれた図が、タイム(横軸)とストライド身長比(縦軸)、「ピッチ」と書かれた図が、タイム(横軸)とピッチ(縦軸)を比較した物です。R2乗値はストライド身長比とタイムとの相関関係を0.267、ピッチとの相関関係を0.198と表しています。これはすなわち、ストライドが伸びる方が、ピッチよりもタイムを伸ばす要因としては大きいということができるわけです。ここまでは皆さんもご存知だと思います。しかし、ストライド身長比1.2倍以上のレースに絞り比較すると、面白い結果が得られました。何と、ストライド身長比1.2倍を超えると、タイムとの相関が横ばいとなり、ピッチによるタイムの向上がみられたのです。(R2乗値=0.794)この結果は、どんなに速い選手でもストライド身長比が1.2を超えることが難しいということを示唆しています。この性質を利用して、自分のストライド身長比が1.2倍にどれほど近いかで、自分の滞空時間が足りているのか、そうでないのかを求めることができるわけです。この特徴は、桐生選手だけでなく、他の選手でも当てはまるということができそうです。下図は下記4選手のタイムと歩数から、タイム別の平均ストライド、平均ピッチ、平均ストライド身長比を算出したものです。小池祐樹桐生祥秀多田修平ウサインボルト上記の4選手のベストレースと、その他の平均的なレースを比較しています。興味深いことに、ほぼすべての選手が、タイムが伸びるときストライドの増加よりもピッチの増加によってタイムが伸びていくことが明らかになっています。 これは興味深いですね。上記のことから、自身の身長が1.2倍にどれだけ近いか、そのストライドでピッチが何回かを見ることができれば、自分の接地時間が長いのか、短いのかも観察可能となるわけです。例えば、自分のストライド身長比が1.2倍にもかかわらず、同じ身長で自分より速い人がいる場合、ピッチで遅れを取っている可能性が挙げられます。ストライドをこれ以上のばすことは難しいため、接地時間を短くしながらどれだけストライドを現状のまま維持できるか、すなわち滞空時間を維持できるかを意識しながら練習することになります。以上が、自分のストライドとピッチから、自分の接地時間と滞空時間の適正値を予測する方法でした!7.指標を練習に活かす方法1さて、ここからは応用編です。先ほど説明した指標を練習に活かすための方法について解説していきます。指標を練習に活かす方法その1<自分の現状を把握する>まずは兎にも角にも自分の現状を把握することが最優先です。大きく4つのSTEPに分けて解説していきます。 STEP1:ビデオで自分の走りを撮影する 自分の走りをビデオカメラで撮影します。歩数を測りやすくするため、ゴールラインの近くで撮影することをお勧めします。 STEP2:歩数を数える自分の歩数を算出します。この時、ゴールラインにぴったり歩数が合うことはほとんどないと思うので、小数点第一位まで目測で計算します。例えば、100mを10.80秒で走り、47歩と0.8歩のところでゴールラインを跨いだので、「47.8歩」とするなど。 STEP3:ストライドを算出する。自分の平均ストライドを算出します。上の例でいくと100m÷47.8なので、一歩あたり2.09m/歩となります。 STEP4:ピッチを算出する。自分の平均ピッチを算出します。100mのタイムを歩数で割り、その数を1で割ると一秒当たりの歩数が計算できます。上記の例だと、1÷{10.80(タイム)÷47.8(歩数)}=4.42歩/秒こちらの計算は少し混乱するので注意が必要です。まず最初に10.80÷47.8を行い、(≒0.226)、その数で1を割ります。(1÷0.226≒4.42)この時点で、自分の平均ストライド(2.09m)とピッチ(4.42歩/秒)が計算できました。 STEP5:ストライド身長比を計算する自分のストライドと身長の比率を計算します。仮にこの選手の身長が185cmだった場合、ストライド身長比は209cm÷185cm≒1.13倍となります。8.指標を練習に活かす方法2指標を練習に活かす方法その2<目標を設定する>現状の把握が完了したら、滞空時間/接地時間を伸ばすための目標を設定しましょう。この時、下記の3つを用意するとモチベーションが保ちやすいです。短期目標(今シーズン中に達成したい)中期目標(来シーズン開までに達成したい)長期目標(来シーズン以降に達成したい)ここでは、自分がストライド身長比の倍率がどの程度に設定したいか設定します。どの程度の倍率を設定するかはそれぞれにお任せしますが、最大値は1.2を超えないように注意しましょう。(これを超えるのは非常に難しいです。)また、自分の走り方のタイプにも注意が必要です。例えば、9秒台を達成した小池選手の平均ストライドは1.12倍だったため、この選手はSF-Typeの選手に分類するかと思われます。色んな倍率で試行錯誤し、自分の走りのタイプを見極めましょう。また、短期目標、中期目標、長期目標で段々と倍率を伸ばしていくことをお勧めします。例)短期目標:1.14倍中期目標:1.17倍長期目標:1.20倍ピッチの目標値は、自分の出したいタイムから目標のストライドで100を走ったときの想定歩数から計算して求めましょう。例えば、中期目標でストライド身長比1.17倍を実現した時、10.4秒で走りたい時、例)185cm(身長)×1.17(ストライド身長比)=216.45cm/歩100m÷216.45cm=46.2歩10.4秒(タイム)÷46.2歩=0.225秒/歩1÷0.225秒=4.44回/秒(ピッチ)筆者は算数が苦手なので、このように算出しています笑他に良い方法があれば教えていただけると幸いです笑ストライド身長比をいかに高く維持しながら、ピッチを伸ばしていくかが重要です。9.練習指標を練習に活かす方法3魔法の方法を練習に活かす方法その3<練習に取り組む>最後は、設定した目標を達成できる練習方法を考え、取り組んでいきましょう。この時、2つの視点で練習を考えていく必要があります。1.滞空時間を伸ばすための練習(ストライド身長比を伸ばすための練習)滞空時間を伸ばすための練習は、瞬発力や最大筋力を高めることによって達成されることが多いです。瞬発系のジャンプトレーニングや、自分の持ち上げられる重量の限界に近い重さでウエイトトレーニングを行うと良いかもしれません。2.接地時間を短くするための練習(ピッチを伸ばすための練習)接地時間を短くするための練習は、エネルギー変換効率を高めたり、軸づくりの強化といった技術系トレーニング、それをレース終盤から後半まで維持するための筋持久系のトレーニングで達成されることが多いです。階段ドリルやパワーポジション(こちらの記事で解説しているのでそちらをご一読ください。)を強化するためのトレーニング、筋持久力を上げるためには、インターバル走や中負荷、中距離(自分が試合で走る距離の1.5~3倍の距離)で後半でも回転数を伸ばすこと意識した練習を行うといいかもしれません。まとめ走りにおいて、滞空時間を長く、接地時間を短く。これが走りの鉄則です!どのような練習においても、このことを常に頭において練習してみましょう。調子が悪いとき、あなたは常に「接地時間が長く、滞空時間が短い」はずです!今回の記事の内容をまとめます。疾走速度とストライド/ピッチには相関関係が無い。ストライドには滞空時間が、ピッチには接地時間と滞空時間が関係しているストライドは、ストライド身長比1.2を超えて伸ばしていくのは難しいこの特性を活かして、自分の目標ピッチ/ストライドを割り出し、滞空時間/接地時間の指標とすることができる。滞空時間/接地時間の指標を練習に取り組むためには下記の三点が重要①自分の現状を把握②目標を立てる③練習に取り組んでいくSmartDashでは、陸上に関する情報をこれからも発信していきます。様々な視点から陸上を分析していくので、これからも乞うご期待ください!参考文献:内藤 景 苅山 靖 宮代 賢治 山元 康平 尾縣 貢 谷川 聡 『短距離走競技者のステップタイプに応じた100 m レース中の加速局面の疾走動態』https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/58/2/5813012/pdf/-char/en【表2/桐⽣祥秀選⼿の平均ピッチ、平均ストライド、ストライドの⾝⻑⽐】https://www.jaaf.or.jp/files/article/document/11337-1.pdf)土江寛裕 櫛部静二 平塚潤 『最大スプリント走時の走速度, ピッチ・ストライド, 接地・滞空時間の相互関係と, 競技力向上への一考察』https://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-09149775-3303.pdf