目次「坂で走ることと平坦な地面を走ること」との違いについて坂練習の効用について練習メニューの紹介まとめみなさんこんにちは!今回は砂浜練習の解説に続き、坂練習の解説をしていきたいと思います。(砂浜練習の解説をまだ見ていない方はこちらをチェック)みなさんは坂練習をしたことがありますか?おそらく、砂浜練習よりは、より多くの方がやったことのある練習なのではないでしょうか? 特に、夏の合宿などで多く行われている坂を使った練習ですが、こちらも砂浜と同様になんとなくキツいから鍛錬に向いていそう、というような理由で行ったりしていないでしょうか? いつも話していることですが我々SmartDashが一番声を大にして主張していることはたった一つです。それは、「速くなるために最も重要なことは、選手の方々が目的をもって練習に取り組む」ということです。そのためには、練習の「効用」「目的」を理解し、自分の目的にあった練習メニューを「自分で考え、組み立て」取り組んで行く必要があります。 我々 SmartDashは、速く走りたいと願うあなた方の味方です。微力ながら、競技パフォーマンスアップのためのお手伝いをさせていただきたく、練習の効用、目的について解説させてください! 今回は、坂練習の目的や効用、練習メニューについて解説していきます!①「坂で走ることと平坦な地面を走ること」との違いについて 皆さんは、坂練習をどのような目的で取り組むことが多いでしょうか?坂での練習に目的を見出すためには、「坂で走ること」と「平坦な地面で走ること」との違いを理解する必要があります。(ここの違いについて理解しておかなければ、坂練習をなぜ行わなければいけないのかがおざなりになってしまいます。) 坂練習は、普通の地面を走ることに比べて、下記のような違いがあります。走者の進行方向と逆向きの力が常に伝わる地面が近く、滞空時間が短くなる1-1.走者の進行方向と逆向きの力が常に伝わる 皆さん突然ですが、下記の図を見たことがありますでしょうか。(出典:http://school-physics.printych.com/mechanics/15-coarse-slope-movement/)こちらは、高校受験でおなじみの物理で用いる力の方向、大きさをベクトルで可視化した図です。細かいことを理解する必要は全くありませんが、こちらの図で一つだけ重要なことがあります。 それは、この図のmgsinθの矢印です。(下り坂の方向に出ている薄い灰色の矢印です)斜面上では、重力や垂直抗力といった力の合成によって、斜面の下り方向に常に力が加わります。もし坂を上に登ろうとしたとき、この力に逆らって斜面を登らなければなりません。これが、「坂を登るとなぜ前にすすみづらいのか」、の正体です! 坂練習では、この「常に後ろ向きに伝わる力」を上手く利用することで、様々なメリットが得られます。 その中でも特に大きなメリットは、とても気軽にレジスタンストレーニングが行えるという点です。 レジスタンストレーニングとは、砂浜で走ったり、牽引走などといった、通常のスプリントよりも強めの負荷をかけて行うトレーニングのことです。坂トレーニングは、数あるレジスタンストレーニングの中で、最も手軽なトレーニングの一つと言えます。牽引走などに用いる牽引装置を用意せずとも、坂を登るだけで済みますし、重たい器具などを利用する必要がないため、より自然な走りに近い状態で行うことができます。1-2.地面が近く、滞空時間が短くなる 地面が近い、という表現は少し違うかもしれませんが、これも坂を走るとき、平坦な地面で走るときとの大きな違いの1つです。 では、地面が近いとはどういうことでしょうか?みなさん、階段を登るときのことを想像してみてください。階段を登る際、1段1段を踏んで登っていきますよね?この「段」は、平坦な地面で次の一歩を踏み出すよりも、地面が高い位置にありますよね? つまり、階段を駆け上がる際には、次の一歩の地面が「近く」感じると言い換えることができます。坂を走る際もこれと同じ原理が働きます。(階段と比べると非常に緩やかですが。)坂を走るとき、地面の傾斜が多少あるため、次の一歩が近く感じるのです。 言い換えると、平坦な地面を走るときよりも、滞空時間が短くなるということです。砂浜のとき同様に、若干滞空時間が短く感じることもあるかと思います。短い滞空時間でも、足さばきのタイミングをあわせ、素早く捌く技術を身に着けなければ、坂をスムーズに登り切るのは難しいです!②坂練習の効用についてここまでは、坂と平坦な地面との違いについて述べてきました。それでは、坂という環境下で走ることによって、どのような効用が得られるのでしょうか。 坂練習を行うと、主に下記のような効用が得られると言われています。捌き脚のタイミングを掴むことができる効率よく身体を鍛えることができる2-1.捌き脚のタイミングを掴むことができる 前述したように、坂練習では、常に後ろ向きに力が加わっている、坂に傾斜があり滞空時間が短くなるなどの走りに弊害になる要素がたくさんあります。 その中でスムーズに走るためには、推進力を強化し、短い滞空時間のなかでも左右の脚を素早く切り替えて走る技術が要求されていきます。この技術こそ、捌き脚のタイミングを掴むという技術なのです。 では、なぜ脚捌きのタイミングを掴むことで早くはしることができるのでしょうか。それはすなわち接地時間を短くすることができるからです。実は、接地時間と短距離走との間には相関関係があります。詳しくはこちら 接地時間が短ければ短いほど、100のタイムというのは速くなっていくのですが、どうすれば接地の時間を短くすることができるのでしょうか。 人間の身体の構造は面白く、ある程度の高さまで膝が上がらないと、地面から脚が離れないのです。逆に言えば、ワンテンポ早く膝が上がってくれば、地面から自然と脚が離れ、短い接地時間で走ることができます。 この技術は主に、ストライドを維持しながらピッチを向上させるときに必要になってくる技術です。こちらを常に意識して走ることで、最高速度が自然と向上します。(※もちろん、接地時間を短くするためには他にも様々な技術や要因が関係してきます。あくまで、その中の1要素である足捌きの習得に特化しているということです。)2-2.効率よく身体を鍛えることができる砂浜などのレジスタンストレーニング全てに共通することなのですが、通常の走りよりも負荷をかけた状態で練習を行うため、少ない本数でも、本格的に身体を追い込むことが可能です。 つまり、一本あたりの練習効率が非常に高い練習と言えるのです。また、坂練習は、砂浜の練習と比べると、より身近で取り組みやすい練習であることも魅力の一つですね。(居住地によりますが、砂浜と比べれば、比較的近くに行きつけの坂がある選手が多いのではないでしょうか。)③練習メニューの紹介 これまで、坂と平坦な地面との違いについて話してきました。以上を踏まえて、坂を用いた練習メニューの話をしていきます!3-1.練習メニューの紹介<技術練習編> 坂の特徴を最大限に活かせる筆者おすすめのメニューは下記です。おんぶバウンディングマーカー走 この3つを平坦な地面と同じようにスムーズに行うことができたら、あなたは坂マスターです!笑 ここでは、坂を駆け上がる練習メニューにおいて、主に技術面のチェックが行える練習についてまとめてみました!<おんぶ走> おんぶ走は非常にシンプルながら、体力面、技術面ともに鍛えることが可能な非常に優れた練習メニューです。 まず、体力面に関する効果ですが、こちらは説明するまでもなく、効果が大きいことがわかるでしょう。ただでさえ坂を登るということは、つねに自分の進行方向の反対側にかかる力に対抗することでキツいのですが、人を担ぐことで、更に坂を登ることが困難になります。臀筋周りや体幹、肺機能を容赦なく痛めつけることができます笑 また同時に、技術面の確認をすることができるのも、この練習メニューの強みの一つです。坂を登る際に、どの筋肉に負荷がかかっているかで、どのような走りを行っているのかがわかります。チェック方法は非常にシンプルで、下半身の前腿が筋肉痛になる選手は、走りの技術の改善が必要な場合が多いです。 一番理想なのは臀部やハムストリングスといった、股関節の進展に関わる筋肉に負荷がかかっている場合です。前腿の筋肉はブレーキのための筋群で、逆に臀部やハムストリングスは、アクセルのための筋群といえます。これらの筋群を上手に使って練習メニューに取り組むためには、パワーポジションを維持しながらおんぶ走を行う必要があります。以前、パワーポジションについて説明している記事を書いたので、気になる方は詳しくはこちらの記事を参照ください!<バウンディング> バウンディングも、坂の特性を活かすことで平坦な地面よりもより効用の高いトレーニングを行うことができます。 坂では、常に進行方向の逆側に力が加わっているため、バウンディングで坂を駆け上がる際、平坦な地面よりもかなりきつく感じるでしょう。 しかしながら、地面を無理やり蹴ったり、接地時間を長くしてごまかしたりした場合、平坦な地面よりも傾斜があるため滞空時間が短くなり、さらにバウンディングで進むことが困難になります。 すなわち、坂で行うバウンディングはごまかしが効かないのです。変に自分の力でごまかすのではなく、速い足さばきや、パワーポジションを意識した接地を行い、接地時間短く跳ねるような動きを行うことができなければ、スムーズにバウンディングを行うことができないでしょう。<マーカ走> マーカー走も、バウンディングと同様に、技術の確認に非常に重要な練習となってきます。特に、坂で行うことでごまかしが効かなくなり、効力が倍増します。 マーカー接地のコツは、平坦な地面を走るときとほぼ同じ歩幅を設定することです。平坦な地面よりも歩幅が広く感じるはずです。あとはバウンディングと同様です。無理やり歩幅を伸ばして走ろうとしても、坂という環境下でごまかしが効かず、かなり苦戦するでしょう。こちらもバウンディングと同様に、素早い接地と乗り込みで乗り越えていきましょう。3-2.練習メニューの紹介<走り込み編> 走り込みメニューでおすすめのメニューは下記2つです。シリーズ走坂下り走<シリーズ走> レジスタンストレーニングでおなじみのシリーズ走の解説をしていきます。シリーズ走とは、60m、70m,80m、90m、100mなどと距離走のセットを組み、それをレスト抜き(ゴールしたあと、歩いてスタートラインに戻る)で連続で走るという地獄のようなトレーニングです。こちらは平坦な地面や、砂浜練習などでもよく筆者が取り入れていたメニューなのですが、とにかくキツいです。 そして、このメニューを行うとき意識しなければいけないことは、どのような状況でも一つだけです。それは、どれだけ疲れても動きを常に維持すること、きつくても量を追うことです。 人間は、練習でキツいと感じると、動きが鈍化したり、流してしまったりします。筆者もそうです。でも、そのような場合でも、乗り込みや短い接地時間などといった動きの要所は必ず維持して走ることを徹底することで、意識しなくても高度な技術を維持して走ることが可能となります。<坂下り走> え?坂って下るの?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。この坂下りトレーニングは、試合近くで量よりも質を重視した坂練習を行うときや、上り坂で得た技術を他の環境下で確認する際に非常に約に立つ練習です。 これまでは、上り坂の練習は、ごまかしが効かず、技術に向いているという話をしてきました。しかし、最もごまかしが効かない練習こそ、この下り坂のトレーニングなのです。下り坂では、力を入れずともスピードが出てしまいます。その中で、しっかりと走るためには、上り坂で登っていたとき同様に素早い捌きや、短い接地時間を維持しなければなりません。これができないと、勝手にスピードが出てしまう中で、接地や足さばきをコントロールしながら走ることができません。 下り坂練習はとても奥が深いので、別記事でじっくりと解説したいと思います。あと、下り坂を走る際は、勝手にスピードが出てしまうので、4~6割程度の力感で走るようにしましょう!④まとめ今回は、上り坂練習の意味について解説していきました。意識して取り組む部分が、砂浜練習と非常に似ていたと思います。強いていえば、砂浜はより反発の技術を鍛えるため、上り坂練習はより乗り込み技術を鍛えることに特化しています。ということは、砂浜でできた上り坂なんて走ったら、、、最近では、東京高校が砂山練習などを行っているのが有名ですよね!反発技術、乗り込み技術のどちらも備えた砂山の練習は、非常に合理的かつ、練習効率がいい練習であるということができそうですね!それでは、本日の要点は下記です!上り坂は常に後ろ向きに力が加わっており、レジスタンストレーニングに向いている上り坂は、乗り込み、足さばきの技術を会得することに向いている。上り坂練習は、レジスタンストレーニングだけでなく、技術の確認を行う事ができる。それでは、またお会いしましょう!!