目次すぐに足が速くなる方法はあるのか?主動筋と拮抗筋とは?1日で足を速くする実験論文1日で効果があるのか検証してみたすぐに足を速くする方法①まとめ①すぐに足が速くなる方法はあるのか?ここまで陸上競技のトップ選手や自身の実験などから得られた走りの原理や理論を記事にして書いてきましたが、陸上競技の選手だけでなく運動会や球技の試合を控えている人も見ていただけるようになってきました。陸上のノウハウ記事を書いていると、よくこんなことを相談されることがあります。それがこちら。「ぶっちゃけ、今すぐ足が速くなる方法ないの?」・・・・・・・・・・・・・・そんな方法ない!!と、陸上の短距離選手はは思うかもしれません。まあ100m200m400mを長年やっている方々は年単位で0.1秒を争っているので、なかなかすぐに足が速くなる方法と言っても一概に言えないところはあると思います。。。その場で効果があるかはわかりませんが、足が速くなる走りの原理自体をわかっていれば間違いなく足を速くするアプローチは考えられるので、走りの原理についても読んでみるといいと思います。↓↓↓↓「足が速くなる方法より仕組みを考えよう。」足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。まあそれにしても、やっぱり手っ取り早くその場で足が速くなる方法は知りたい声はよく聞くので、試合直前やすぐに足を速くする効果のある通説について調べてみました。海外の研究論文などを漁り、驚きの事実がわかりました。それがこちら。ある筋肉をストレッチするだけで主動する筋力パフォーマンスが高まり、即時的に(すぐに)足が速くなる可能性があることが学術論文で記されているんです!!*注意*ストレッチはやり方によっては、ストレッチ対象筋肉の筋力を低下させることもわかっているので注意が必要です。今回はその学術論文を紹介しながら、超簡単にパフォーマンスを高める方法について考えていきたいと思います。小学生でも中学生でも、男性でも女性でもどなたでも簡単に、かつ1日で筋力効果を高められる方法です。キーワードは主動筋と拮抗筋!①主動筋と拮抗筋とは?筋肉には「主動筋」と「拮抗筋」という概念があり、筋肉の機能の表と裏の関係性を表したようなイメージを持ってもらうとわかりやすいかと思います。上図では、力こぶを作る右の図では、上腕二頭筋を収縮させて肘を屈曲させています。このとき、裏側の上腕三頭筋が引っ張られるように伸びています。上腕二頭筋のように、屈曲させ、力こぶを作るようにに主動して筋肉を収縮させる筋肉のことを「主動筋」と呼びます。反対に、主動筋に引っ張られ、緩み、主動筋がある一定の所までしか機能しないよう抑制する筋肉を「拮抗筋」と呼びます。もしこの「拮抗筋」がなければ、主動筋の機能を途中で止めることや、収縮を戻すことができなくなってしまいます。②1日で足を速くする実験論文「拮抗筋」についてざっくりわかったところで、「拮抗筋」に着目して筋力を即時的に向上させた実験を紹介します。イースタンイリノイ大学の研究によると、拮抗筋のストレッチによって即時的に主動筋の筋力が向上すると報告されています。↓↓↓↓(John B Sandberg, Utah State University Dale R Wagner, Utah State University Jeffrey Willardson, Eastern Illinois University gerald Aparecido Smith, Utah State UniversityACUTE EFFECTS OF ANTAGONIST STRETCHING ON JUMP HEIGHT, TORQUE, AND ELECTROMYOGRAPHY OF AGONIST MUSCULATURE)https://pdfs.semanticscholar.org/ca16/cf52e4d4251d624c861fdbc1b05d26787878.pdfどんな研究をしたかと言うと、以下の2つです。A.ハムストリングの静的ストレッチで膝伸展能力は高まるか?B.股関節屈筋の静的ストレッチで股関節伸展能力は高まるか?それぞれ詳細を説明していきます。A.ハムストリングの静的ストレッチで膝伸展能力は高まるか?1つ目の実験は、ハムストリング(大腿二頭筋)の静的ストレッチが膝の伸展運動筋力(大腿四頭筋)に影響があるかどうかを検証した実験です。方法は、普段から運動を行っている男性生徒16人を対象に、以下の二通りの手法で膝の伸展能力を計測しました。①事前準備もなく膝の伸展運動を行う②事前にハムストリングをストレッチしてから膝の伸展運動を行う膝の伸展運動は、座った状態で、片方の足を振り上げる動作を指します。↓↓↓↓ハムストリング(大腿二頭筋)を事前に静的ストレッチする場合は、以下のようなストレッチを行いました。↓↓↓↓実験の結果、②の事前にハムストリングをストレッチしてから膝の伸展運動を行う場合の方が9.3%筋力が向上した結果が得られました。*筋力とは、maximum voluntary contraction(随意最大収縮)を指し、人間が意識的・自発的に発揮する最大の力を意味します。その日の1日のうちに効果が出てしまったので、驚異的な数字です。。。B.股関節屈筋の静的ストレッチで股関節伸展能力は高まるか?2つ目の実験は、股関節屈筋(腸腰筋群)の静的ストレッチで、股関節伸展能力(大殿筋の収縮)が高まるかどうかを検証した実験です。方法は、Aと同じく、普段から運動を行っている男性生徒16人を対象に、以下の二通りの手法で股関節の伸展能力を計測しました。①事前準備もなく、垂直ジャンプを行う②事前に股関節屈筋を静的ストレッチしてから垂直ジャンプを行う(今回の実験では、股関節の伸展能力を垂直ジャンプの高さで計測しています。)ちなみに、ここでいう股関節屈筋とは、大腰筋や腸骨筋を含めた腸腰筋群を指します。↓↓↓事前にストレッチを行ったケースでは、一般的なランジの姿勢のストレッチを行っています。このストレッチの後に垂直ジャンプをし、大殿筋の筋力は向上するのか確かめます。↓↓↓↓実験の結果、②の事前に上図のストレッチを行った場合の垂直ジャンプの記録が平均1.2cm(2%)向上した結果が得られました。こちらも2%と、小さいように感じますが、100m50歩として1歩につき1.02倍力が向上すると考えると、100mトータルで2.7倍の力積を獲得できることになるインパクトがあります。(単純計算すると)1日でこんなにも効果が出るものなんですね、とほほ、、、。ちなみに股関節をストレッチし、大殿筋の収縮を向上させる重要性を説いている記事もあるので参考にすると理解が深まると思います。↓↓↓↓【走りのエンジンとは】お尻の筋肉で足が速くなる理論拮抗筋の柔軟性が主動筋の筋力向上にイースタンイリノイ大学の研究によって、拮抗筋のストレッチ、柔軟性が主動筋の筋力を向上させる可能性が提唱されました。他の研究論文でも似たような結果が示唆されています。↓↓↓↓拮抗筋を疲労させて機能を低下させることで、主動筋の筋力が向上することを示唆する論文もあったりします。「Effects of preceding fatigue of antagonist on output and EMG activity of agonist 」http://www.waseda.jp/sports/supoka/research/sotsuron2009/1K06A254.pdf前述したように、拮抗筋は主動筋の機能を抑制する機能があるため、拮抗筋の機能を低下させれば主動筋を抑制する機能も下がり、結果的に主動筋の筋力を向上させることは確かに想像できます。逆に言えば、主動筋自体の柔軟性を高めると、そのまま主動筋の筋力が即時的に低下することもイースタンイリノイ大学の研究では示唆されています特に、股関節の伸展機能は走ることにおいて、進行への力学を発生させる非常に大事な機能になります。どれくらい重要かまとまっている記事もありますので、読んで見ると理解が深まると思います。↓↓↓↓「足が速くなる方法より仕組みを考えよう。」足が速くなる方法より走りの仕組みを考えよう。③1日で効果があるのか検証してみた拮抗筋をストレッチしてすぐ結果が出るとか本当かよ。という方のために、実験してみました!!!!!検証実験方法イースタンイリノイ大学の研究では垂直ジャンプを効果測定に用いていたので、今回は立ち幅跳びで検証してみました。実験フローはほぼ同じで、4人の男性大学生陸上部員に以下の3パターンを行ってもらいました。①事前準備なしで立ち幅跳びを行う②股関節屈筋の静的ストレッチ後、幅跳びを行う③股関節屈筋の動的ストレッチ後、幅跳びを行う(最後におまけで動的ストレッチの場合もどのような結果が出るのか検証してみました。)静的ストレッチはイースタンイリノイ大学の研究と同じやつです。↓↓↓↓動的ストレッチは以下のように前後に足を振るようなものを採用しています。↓↓↓↓動画を見る結果結果はこちら!↓↓↓単位(cm)言われてみれば伸びてるね〜といった結果が得られました。全体の傾向としても、股関節屈筋の静的ストレッチ後の方が何もしない場合よりも記録が伸びっています。(1%の向上)今回は事前に動的ストレッチを行った場合も検証していて、この場合に関しては5%向上していて、かなり優位な結果が得られています。(動的ストレッチの場合、体温や筋温度が上昇してパフォーマンスが高まったことも考えられるので、拮抗筋の影響とはいい切れませんが)④すぐに足を速くする方法①まとめいかがでしたでしょうか。走りに直結する股関節の伸展機能を即時的に高めることで、その場で足を速くすることに繋がる方法をご紹介しました。拮抗筋の柔軟性向上による、主動筋の筋力向上は他の実験でも取り上げられていて、最大筋力だけでなく筋持久力にも優位な影響があることも報告されています。↓↓↓↓リオデジャネイロ連邦大学「Acute Effects of Antagonist Static Stretching in the Inter-Set Rest Period on Repetition Performance and Muscle Activation」https://www.researchgate.net/publication/271597595AcuteEffectsofAntagonistStaticStretchingintheInter-SetRestPeriodonRepetitionPerformanceandMuscle_Activation実際に走りのデータも将来的には検証できたらもう少し確証も持てるのでそこは頑張ります。(笑)